第2章 ザ・ドラゴン

14/21
前へ
/90ページ
次へ
「ともあれ、陛下のおかげでモンスターの巣は制圧できました。早速ニーベルの町に知らせましょう。一刻も早く住民の心に平穏を取り戻したい。」 カールは話を戻し、ニーベルの町へ向かうため洞窟の入口方面へと歩き出した。 「そうだな。まずはそれが先決だ。」 ジェラールも後に続く。 モンスターが倒された事を知ればマーニャも喜んでくれるだろうか。 ジェラールの脳裏には知らせを聞いて明るく笑うマーニャの顔が浮かんでいた。 -ニーベル- 「格闘家がモンスターの巣を壊滅させたぞ!」 「やっぱり格闘家は無敵だ!ザ・ドラゴン万歳!」 「帝国も協力してくれたみたいだぞ!」 「格闘家に帝国じゃ怖いもの無しだな!」 「ザ・ドラゴン万歳!皇帝陛下万歳!」 ジェラールとカールがニーベルに凱旋し、町に知らせが行き渡ると町民達はその話題で持ちきりになった。 誰もが口々にジェラールとカールを讃えている。 カールがボスモンスターを討伐した事で格闘家のメンツは保たれ、それに付随する形で協力した帝国の株も大きく上がったようだ。 「ジェラールさん!」 「マーニャ!」 町民に囲まれるジェラールの元に、その合間を縫うようにしてマーニャが駆けてきた。 「良かった!また会えた。」 マーニャなニッコリと笑う。元気な笑顔。ジェラールはそれを見てとても優しい気持ちになる。 「ジェラールさん、ケガはない?今夜はうちの宿に泊まって行ってね!うんとご馳走作るんだから!」 「ああ、大丈夫だよ。おお!それはありがたい。このままアバロンに帰るには野営をしなくてはならないのでな。またお前の宿を訪ねようと思っていたのだ。」 マーニャは嬉しそうに体を揺らして跳ねる。 「やった!じゃあ私、早速準備しておくね!」 そういうとマーニャは手を振りながら宿に戻っていった。 「おや?陛下も隅に置けませんなぁ?」 カールは腰に手を当て、ジェラールを覗き込むようにどこかで聞いたセリフを口にする。 「ははは、カール。彼女は私の友人だよ。皇帝という立場を抜きにして対等に付き合える、初の、大切な友人だ。」 「そうですか。それは結構。」 カールは腕を組み、大きく頷く。仮面で表情は見えないが、その下でカールは穏やかに微笑んでいた。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加