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「レオン様、ヴィクトール様が亡くなられて1年が経ちました。そろそろ行動を起こしても差し支えないかと思います」
ジェラールは大臣を玉座まで呼びつけ、今後の行動について話し合っている最中だった。
「うむ。では情報を聞かせてくれ」
大臣はこの1年、国内の混乱を収めるために走り回っていたが、やがてジェラールが本格的に行動する時期を見据えて、部下と共に国内外の情報を集めていた。
「はい。南バレンヌにはかつて帝国が築いたヴィクトール運河があります。しかし現在は何者かがそこに要塞を築き、交通権を支配しております」
ヴィクトール運河。
その名はジェラールにとって思い入れ深いものだった。
今は亡き雄々しき兄の名。
運河の力強い姿が浮かんで来るようだった。
「ヴィクトール運河か…よし!南バレンヌに進出だ!」
ジェラールは玉座から立ち上がると当面の行動として大臣にそう告げた。
大臣は了解とでも言わんばかりに玉座の間を飛び出し、早速準備にかかる。
先のソーモン制圧で、北バレンヌは完全に帝国の支配が行き届き、後方の安全が確保された。
したがって、ジェラールも国を一時家臣に預け、諸国に足を運ぶ事ができるようになったのだ。
まず目指すは南バレンヌの小さな町ニーベル。
近くには「龍の穴」と呼ばれる格闘家の修行場があると聞く。
早速ジェラールはベア、ジェイムズ、テレーズ、ヘクターに声をかけ、南バレンヌへと乗り出した。
しばらくはニーベルを拠点として現地を視察、情報を収集することになるだろう。
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