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「ジェラールさん…覚えてる?私がジェラールさんをデートに誘った時の事…」
「ああ、覚えているよ。というか、まだ昨日の事だしな。」
ジェラールとマーニャは屋上のベンチに座り、月を眺めるように並んで座っている。
マーニャはジェラールに身を預けるように寄り添い、その体をジェラールの肩にもたれかけている。
「もうっ!雰囲気の無いこと言わないの!」
マーニャはぷくっとふくれた。
「はっはっは。すまない。」
「あの時…ううん、ジェラールさんを一目見たとき思ったの…あ、この人だって…」
マーニャは顔を赤らめて瞳を閉じる。
ジェラールは自分でも顔が赤くなっているのが分かった。
「そ…そうか…それは…その…光栄…だな…」
「もうっ!堅いんだから…」
マーニャはまたぷくっとふくれた。
その様子がジェラールにはとても愛らしく見えたが、かなしいかなジェラールはそれを表現できるほど小慣れてはいない。
「ホントはね…すごいドキドキしてたの…デートなんてあんまりしたことなかったし…」
夜風がふっと吹き抜ける。透明で澄んだ風のささやき。それはマーニャの髪を僅かに揺らし、その香りをジェラールに運んだ。
「そうだったのか…てっきり町の者は…その…そういう事に慣れているのかと…」
「そんなことないよ。ジェラールさんの事もっと知りたかったから…」
「そうだな…お互いまだ知らぬ事ばかりだ。マーニャ、私も君の事をもっと知りたいよ。」
マーニャはビクッと身をすくめて顔を真っ赤に染めた。
「ジェラールさん…それって……嬉しい…」
マーニャはジェラールに視線を合わせると、唇を差しだし、そっと瞳を閉じた。
「!!」
ジェラールは戸惑う。
人生で初めて、女性から口付けを求められている…?
話には聞くが作法などさっぱりだ。
しかし、マーニャにここまでさせておいて尻尾を巻いて逃げるわけにはいかない。
ジェラールは覚悟を決めた。
マーニャに顔を近付けゆっくりと目を閉じる。
すると…
バターンッ!!
大きな音と共に屋上の扉が開かれた。
そこには酒瓶を持ったジェイムズがフラフラしながら立っていた。
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