第3章 泥棒猫

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翌日。 ジェラールの部屋には、床に頭を擦り付け、縮こまるようにして土下座をするジェイムズの姿があった。 「た、た、た、大っっっ変っ!申し訳ございません!」 ジェイムズは激しい頭痛と共に目を覚ますと、事の顛末をベアに聞かされた。 途端に青ざめ、その足でジェラールの部屋に乗り込んできたというわけだ。 「ジェイムズ、もうよい。ベアに酒を与えるといつもの事のだしな。もう慣れた。それに、助かったといえば助かったしな…」 マーニャの電光石火の如き攻勢に、あわや押し切られようとしていたジェラールは、その場の空気を変えてくれたジェイムズの登場に安堵した部分もあった。 「そ、そういうわけには参りません!ベアに一服盛られたとはいえ、昨日の今日でこの体たらく!今度こそこのジェイムズ、腹を切ってお詫びを…」 ジェイムズは懐刀を取りだし、刃を抜く。 「うわっ!ジェイムズ!待て!それはやめろ!とりあえず落ち着いて…頼む!やめてくれ!」 「は、離してください、ジェラール様!私はもうこれしか…!」 ジェラールは、じたばたと暴れるジェイムズを押さえつけて懐刀を取り上げようとするが、ジェイムズは言うことを聞かない。 「おい!ベア!ヘクター!誰か助けてくれー!」 その声に慌てて駆けてきたベアとヘクターによってジェイムズは取り押さえられ、懐刀を取り上げられた。 「ベア、酒を人に飲ませる時は程々にしろよ。お前は大丈夫でもジェイムズはそうもいかんようだ。」 「はい…面目ありません…」 ベアが珍しくしょんぼりしている。 「まあ、よい。それよりベア、私はこれからカールの所に運河要塞の件で話をしにいく。すぐ戻ると思うが、それまでにアバロンへの帰り支度を整えておいてほしい。」 運河要塞についていかに情報を得られようとも、一旦はアバロンに戻って準備する必要がある。 このニーベルでの情報収集活動も一旦の区切りだ。 「はい、分かりました。しかし、お一人で行かれるんですか?」 「ああ、モンスターも散らされ危険も少ない上に近場だ。竜の穴にはカール達もいるしな。七英雄でも沸いて出ぬ限り安心だ。」 「わかりました。ジェラール様が戻る頃には出発できるようにしておきます。ところで…」 ベアがニヤリと嫌な笑みを浮かべる。 「昨日、マーニャさんと何があったんですか?」 「なっ…!」 ジェラールは顔を赤くした。
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