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「はっはっは!仲が良いな2人とも。」
ベアとジェイムズは性格こそ真逆だが、いつもこうして連れ立っている。
きっと他人には分からない深い部分で通じあった、良き友なのだろう。
「なっ…陛下!私はこんな奴と仲良くなど…」
ジェイムズが少し顔を赤くしながら反論する。
「それに酒場での情報収集というのもいい案だ。その手でいこう。それにこうした離れた場所で庶民的な酒場に入るのは初めてでな。楽しみでもあるんだ。」
「なんと!陛下!」
ジェイムズはジェラールの意外な食い付きに目を丸くして驚いている。
「ほーらな?お前の頭が固すぎるんだよ。ジェイムズ。」
ベアはジェイムズの背中をバシバシ叩きながら得意そうな顔をしている。
「よし、そうと決まれば早速、宿の確保だ。誰か良い宿を知らないか?」
ジェラールはやはりこうした俗世的な事には弱い。
「私が探しに行ってきます。陛下。」
「よろしく頼むぞ、テレーズ。」
すぐ隣で話を聞いていたテレーズは手頃な宿を探すため町の中に歩いていった。
「まだ日も高い。街中で情報収集といくか。」
ジェラールはベア達を引き連れていると下手に目立つと考え、彼らと別れると1人で町を散策することにした。
それほど大きな町ではない。
帝国の力が及んでいないため、住民も自分で自分の身を守らなくてはならないのだろう、武具を扱う店もある。
品揃えはアバロンと大きく異なるようだ。
「失礼、そこの方。」
ジェラールは偶然見掛けた町娘に話を聞こうと声をかけた。
「きゃっ!やだっ!ナンパ!?」
町娘は顔を赤くして身構えた。
翠髪の2つに編まれた三つ編みおさげがゆれる。
ジェラールも挨拶に困った。
「はっはっは…いや、旅の者なのだが、龍の穴について何か知らないか?」
「なんだ…ナンパじゃないの…?」
町娘は少しがっかりした様子で肩を落とす。
「はは…ナンパでなくて申し訳ない…」
俗世に疎いとこういう時に困る。
この手の扱いに長けそうなベアかヘクターでも連れてくれば良かったのかもしれない。
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