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「おっ!ジェラール様!お待ちしてました!ヘクターの奴、一杯飲ませただけで倒れちまいまして。」
ヘクターはピクリともしない。どうやら気を失っているようだ。
「遅くなってすまなかった。実はこんなことがあってな…」
ジェラールは先程のまでの出来事をベアとジェイムズに話した。
龍の穴の事、格闘家の事、町娘の事。
「はっはっは!ジェラール様も隅に置けませんなぁ!」
「からかわないてくれよ、ベア。本当に大変だったんだ。町の者の付き合いと言うのはこうも大変だとは…私は皇帝で良かったよ。」
皇帝の付き合いや仕事の方が余程の大変なのではないか、とジェイムズは思ったが、口に出さなかった。
「ベア。ずいぶん出来上がっているようだな。楽しそうで何よりだ。それで何か良い情報はあったか?」
ベアはジェラールに近くに来るように手招きすると、耳打ちするような小声で話した。
「あそこの若者がさっきから話している内容…ちょっと気になります。ジェラール様、聞き耳を立ててみてください。」
ベアが目線を送った先には2人組の若い男が酒を飲み交わしていた。
表情はどこか暗い。
ジェラールはその話に聞き耳を立ててみる。
「…格闘家も…苦戦…」
「…帝国の方が…頼りに…」
なるほど、町娘に聞いた話はどうやら余程深刻な事態のようだ。
「ジェラール様がさっき話した町娘の話と同じです。詳しく聞いてみようと思いますが、どうします?」
「そうだな、私が行こう。」
ジェラールは席から立ち上がると2人組の座るテーブルへと近付く。
「失礼、相席よろしいかな?」
2人組はギクリとした顔で話を反らす。
「ど…どうぞ…」
「お、俺も龍の穴に修行に行こうかな~…」
明らかに様子がおかしくなる。
この町で格闘家を差し置いて帝国を頼りにするのはご法度のようだ。
「先程何か言わなかったか?」
2人組の表情に焦りが見え、目が激しく泳ぐのが分かった。
「べ…別に~…」
「失礼した。聞き方が悪かったな。…私が皇帝だ。」
2人組表情が驚きに変わる。
「!!?」
「こ…皇帝陛下!」
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