6人が本棚に入れています
本棚に追加
毎朝起きるとキッチンからコーヒーの良い香りが漂う。
ベッドから起き部屋から出ると、「おはよう」と声を掛けられ、ぶっきらぼうの俺は「あぁ……」と返すだけ。
毎朝、玄関に突っ込まれている郵便受けにある新聞を手に取る。
春に近いのにまだ冬のような寒さでぶるりと身体を震わせる。
暖の通らないこの寒い廊下には、いくつになっても絶対に慣れる事は無いだろうと思う。
暖が通っているリビングがとても恋しい。文明の器具様さまとはこう言う事をいうのだろうと思う。
暖かいリビングにすぐに戻り、ソファーに座るや否や先程取ってきた新聞紙をバサッと広げる。
新聞紙を見ながら、片手で寝室から持ってきた煙草を箱から一つ取りだし口にくわえ、もう片方の手でライターをカチカチッと鳴らす。
残り少ないライターのオイルのせいなのか、中々火がつかない。
少し苦戦しながらも、その数秒後にはやっと火着く。
あと数回使ったらこのライターともおさらばするかなと思いながら、くわえていた煙草に着け思いっきり息を吸う。
この瞬間が今の俺の唯一の至福の時だ。
プハーと口を開ければ、出てくるのは今吸ったばかりの煙草の煙。
『あ、輪っかが出来た』なんてボンヤリ考える暇も出来た。
最初のコメントを投稿しよう!