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「大丈夫。もう少ししたら出ていくから」
ハッと我に返されたのは、彼女の一言。
今日は、いつもと違う。
いつもと変わらない日常は、いつだって突然のピリオドが来る。
「もうすぐ、お迎えがくるから」
「……そうか」
灰皿に置いていた煙草は、いつの間にか消えて、只の灰になっており、小さな煙といつの間にか置かれていたコーヒーの匂いと湯気が漂っているだけだった。
「長かったなぁ……ホント」
そう呟いて俯く彼女は泣いているのだろうか。
「……っ」
こんな時に、なんて声を掛ければ良いのか分からず声が出ない。
──トントントンっ
突如、玄関から聞こえるノック音。
「あ……。お迎え、来たみたい」
彼女がそう言った。
どうやら、お迎えが来たようだ。
「俺が、出るよ」
「そう?ありがとう」
彼女はまたフフッと笑った。
俺はソファーから立ち上がり、リビングの扉の前で立ち止まった。
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