コーヒーと煙草、時々、煙。

『──速報です。5年前に起きた喫茶店のアルバイト店員、三柳唯花さん(当時17)のストーカー殺人事件の容疑者、瀬波勇次(31)を逮捕しました。決め手となったのは、被害者が持っていた煙草の吸い殻からDNA鑑定をした所、容疑者のDNAと一致したとのことで逮捕に踏み切ったとのことです。尚、容疑者の部屋から……────』

テレビから流れる速報ニュース。

5年前に起きた一方的で歪んだ恋心が起こした事件。

生きていたら彼女、三柳唯花は22歳。夢も未来もあった彼女の命は、一人の男の身勝手さによって奪われてしまった。

彼女は意識が朦朧としていく中、『痛い』『助けて』『死にたくない』『悔しい』『悲しい』『どうして？』『何で私が？』『止めて……』『許せない』『……許さない』そんな事を思いながら、男が自分を待っている間に吸っていたのであろう煙草の吸い殻に息絶え絶えの中、手を伸ばした。

あぁ……自分はもう、ダメかも知れないと悟った唯花は、何とかして『犯人はコイツだ』、と証拠を残さなければと思った。

目の前に散らばった煙草の吸い殻一つを何とか握りしめ、彼女は静かに瞳を閉じた。