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香のかおりが脳をゆらした。妙に甘ったるいにおいだ。
豪勢な装飾に彩られる部屋には、魅惑の媚香が満ちていた。
部屋の中央に置かれたベッドの上で、少女の白いからだがビクンとはねた。
これまで感じたことがない痛みに全身が拒否反応をおこしていた。
異物をうけ入れた経験のない隘路に裂けるような痛みがはしる。
──こわい……こわい、やだ、やめて!
大腿のあいだがトロトロに溶けていた。粗相をしてしまったのかと少女は思ったが、そうではないことに気づき始めていた。
たくしあげられたシフォンのドレスのパールが縫製糸からはずれ、ゆれるベッドをおどるように飛びはねていく。
天井をさえぎる視界に絶世の美青年の顔があった。
金の髪と、蒼い瞳。
透けるような白肌の上腕部から肢体流れに沿う汗粒までもうつくしい。
そんな青年の熱い息が、少女の耳に寄せられた。
「名前を……」「っ……いや…」
並の女性ならば一瞬で心を奪うことができる容姿も、誘惑の声色も、少女の前ではなにひとつ効果がなかった。
まだ完全に拓ききっていない蜜口は、まるで青年の強さの象徴を逃すまいと、きつく締めつける。
青年の我慢はもはや限界に達していた。
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