普通列車

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 7月25日。 涼しい風の朝の8時少し前、早朝のお決まりで車の少ない広い駐車場に、私と同期のバイト仲間の中村と上村とで、雑談をしながら待機をしていた。 そこは緊急時には、例えば火災や地震の時だが、避難所となるところだった。  株式会社エコールの正社員の谷川さんが、真向かいの古い工場から現れた。工場と同じく古い姿形をしていて、もちろん停年退職すれすれ。くたびれた歩き方でやってきた。 「今日もよろしくお願いします」  谷川さんへ三人で挨拶をした。 「おはよう。今日もよろしくね」  毎日の挨拶が済むと、三人は谷川さんの後について行く。行先は古い工場の中にある。ライン上の大量のペットボトルの死骸があるところだ。  作業内容はその大量のペットボトルの死骸から生存者を見つけること。ずばり目視検査だ。作業は単調で寝むくなることこの上ないが、給料も悪くなく時給870円。私と中村と上村は、規則正しく5年間もこの仕事を続けていた。 「ああ、早く帰りてぇ」
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