普通列車

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 中村は正社員が傍に居てもいつもマイペースだ。確か50代になる。中年でケ◯タッキーおじさんのような体格をしていて白髪である。 「中村さん、頑張りましょうよ! 冬だときついっスけど、今は夏ですよ!」  冬での駐車場での待機は寒い。谷川さんが来るまで、少し早く来る三人は仲良く震えているので……。 「そうですよ! 中村さんフャイトー!」  と、上村。36歳になったばかりのひょろ長い体型。そして、禿頭。 「確か赤羽くんはパチンコが好きだったよね。ギャンブル好きなの?」  上村が歩きながら話しかけている。 「いえ。単に暇潰しですよ」  多種多様の大型機械の間を通り抜け、巨大な一室の作業場に着いた。腰のあたりの高さにあるベルトコンベアーに流れる大量の色々な形のペットボトルは、500ミリリットルや1リットル、そして4リットルなど主に飲料水だ。黒い染みがある死骸は長方形の洗浄機へ、そうでない生存者を各々の脇にある大型のリサイクル機に入れるだけの仕事だ。作業は必然的に、どうしても単調で眠くなる。この環境が私でも5年間続いた理由だ。   作業開始のチャイムが鳴る。正社員の谷川さんは工場の二階の端末と睨めっこしに行ってくれる。「だけど、すごい量だよな。このペットボトルの量だと。いったい幾らになるんだ」    中村がコンクリートの壁に掛けてある。上着だけの作業着を着ながら、早くも雑談をしてきた。 「俺たちのバイト代よりは高いですね」  私はテンションを上げて冗談を飛ばし、それからエコールの作業着を着て良品とそうでないものを17時まで選別をする。  こんな私でも、最初は良品と不良品の選別に苦労していた。しかし、中村・上村に楽だからと勧められ、経験を重ねていくうちに自然に出来るようになった。中村・上村もだいたいは私と同じくちょっとした苦労と、自然な気楽さに身を委ねた。  二時間後、上村は黙々と仕事をしている。 「俺は昨日、隣の家のババアにナスを貰ったんだけどさ」  中村は慣れた速度で、リサイクル機と洗浄機にかなりのペットボトルを入れながら、こちらに向いてしゃべっている。 「それで夏野菜カレーを作ったんだけどさ……まだあるんだよ。赤羽くん食べるか」 「頂きまっス! ……?」
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