普通列車

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 私はそう言うと、自炊をしなければと面倒がった。いつもは飯はコンビニに買いに行っている。  私は気楽に答えたが少し後悔した。 「でも、ここへ来て良かっただろ」 「ええ。こんなに簡単で雑談をしているだけの仕事はないと思います」  中村は遠い目をして、 「もう五年か。君と出会ってから……。最初は怠け者で仕事もしないいい加減な奴だったな。そして、たまにしか出会わなかったが、この仕事を紹介してから少し人が変わったよ。あの時の事覚えているかい?」 「ええ。あの時、中村さんと上村さんにこの仕事を紹介してもらって、そん時はバイト先で少し仲が良かったんですよね」  思えば中村・上村にこの仕事を紹介してもらって、毎日なんとか働くようになり、今では親元から離れて一人暮らしだ。 「上村さん。アデラ◯スにしてみては?」 「いや。そんな金ないし。今は暑いからこのままでいいよ」  ネタのチャージをしている上村は、大抵髪の話には乗ってくれる。  そういえば中村・上村と私は、三人ともこの五年間でまともな仕事をした時は皆無だ。私は一生ここで働くのだろうと人生を諦めていた。きっと、中村・上村もそうだろうと思う。こんな仕事をして、楽な人生を謳歌し、運がよければ子供のいない家庭を築く。そんな人生を夢見ているのだ。 ………… 今日も一日の仕事を終えて、爽快な達成感を味わいながら家路に着く。いつもの駅前の自動販売機で缶コーヒーを買い。 「御疲れ様」  と、自動販売機の機械の音声を聞き今日も一日の終わりを実感する。   友達はいない。  プライベートでは一年くらい会っていないが、仕事仲間の中村・上村だけだ。  高校時代も友達はいなかった。引っ込み思案な私はクラスでは先生くらいしか相手にして来ない。今は同級生とは全然会わないことにしている。  しかし、彼女がいないというのはやはり寂しい。 私は高校を卒業してからは、数百社に履歴書を送り。面接を受けたが。玉砕をし、毎日働くことが嫌になって、人と接しなくなった。 私の住むひたちの牛久にある1LDKまで、電車で三駅徒歩で30分。藤代駅から「エコール」までは、路線バスで40分。こんな生活を私は飽きずに毎日続けていた。あ、それと休日は祝祭日と土日だ。
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