ブラック無糖派です。

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ブラックの缶コーヒーを一気に煽り、喉に流し込む。 味や香りを楽しむ間もなく、冷たい液体は喉を通り抜けた。 「……っし」 小さめのスチール缶を握りつぶし、空き缶はゴミ箱へ。カランと他の缶にぶつかる音を聞いたら……。 ―――ダッシュだ。 見た目は普通のサラリーマン。 通勤用の手提げバッグには、仕事道具と、缶コーヒー。 しかしそれは世を忍ぶ仮の姿。 変身こそしないが、毎日のメールの返信は怠らない事をモットーに今日も町を駆け抜ける。 革靴は走りにくいがこの姿が仮とはいえ、本当にこの姿で仕事をしているのも事実。 最近では"スーツ姿でスニーカー"を履いていると空き巣と認識されてしまうらしく、革靴が手放せない。 全速ダッシュからの飛び蹴りは、自転車で逃げようとしていた男の背中にヒットし、自転車がつんのめってアスファルトに倒れた。 格好よく着地して、スーツのホコリを払い、自転車のかごに入っていた女性もののバッグを取り返す。 さらに、スマホを取り出し110番。 「あ、もしもし。いつもお世話様です、今現行犯で引ったくりを捕まえましたので、お迎えお願いします」
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