序章

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   「全ては、パパの為に」 可愛らしい少女だった。 刀身に付いた血を払うように、少女はその剣で空を裂く。 男が思ったのは、こんな少女に殺されかけたのか、などではなかった。こんな少女までもが戦争に駆り出されなければならないのか、という思いだった。 そして、それを強いる『パパ』への怒り。 「────……─────」 恐らく男の発した言葉は、彼女にとって許しがたいものだったのだろう。 仮面のような無表情が微かに歪んだ。 少女は男の首をめがけ、真一文字に刃を振り抜いた。 「……AIは、間違ってなんかいない」 赤い花が壁に咲いた。目を伏せたくなるくらいに、鮮やかな赤い花。 骸から滴る赤い根は汚れた水に溶けて混ざり、濁っていく。 黒く汚く、醜い色。 「AIは、パパの為に動くの」 歩みながら少女は呟いた。 「パパは正しいんだ」 自分が正しいと、間違っているのはあいつだと、そう言い聞かせるかのように。 「全ては、パパの為に」
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