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会話
法事で親戚の家に行き、遅くなったのでそのまま泊まることになった。
親戚といっても、うちの両親は子連れの再婚なので、こっちは新しい父親側の親戚だから、俺には血の繋がりはない。
それでも、親の再婚が子供の頃だったので付き合いは長く、二十歳を越えた今でも、たくさんいる従弟達とは和気藹々とやっている。
今日だって、みんなで飲みながら大部屋に雑魚寝だ。
いびきがうるさい奴もいれば、寝相が悪い奴もいる。それでも飲んでいるせいか眠気はさっさと襲ってきて、俺は早い内に眠りに落ちた。
その夜中。
近くで誰かが話す声に俺は眠りから覚めた。
意識は戻っているのに、何故か目が開かない。体もほとんど動かない。
霊体験なんてものには縁遠かったけれど、これが金縛りという奴だろうか。
そんなことを考えていたら、頭の側で話し声がした。
「どの子にしよう?」
「どの子がいいかな」
誰かと誰かが話している。でも多分まだ夜中だ。こんな時間に起きて喋ってるのか?
「この子はどう?」
何かが俺の頭に触れた。その瞬間、動かない全身に凄まじい悪寒が走った。
髪の上から軽く触られただけなのに、感触が物凄く冷たかった。そして、何かとつてもない恐ろしさを感じる。
見ることも、こちらから触ることもできないけれど、何か得体の知れないものが側にいる。それが俺の頭に触っている。
でも、気持ちが完全に恐怖に覆われるよりも早く、その感触は俺から離れた。
その時に聞こえた言葉。
「この子はダメだよ。『チガチガウ』」
「ああ本当だ。『チガチガウ』。これじゃあ捧げられないね」
最初は何を言われているのかまるで判らなかった。でも少しずつその意味が浸透する。
ここにいる従弟達の中で、唯一俺だけ『ちがちがう』…『血』が『違う』。
母の連れ子の俺だけが、従弟達とは血が繋がっていない。つまり血筋が違う。
「だったらこっちの子はどうかな?」
「いいね、いいね、この子にしよう」
気配が隣にいる同じ年の従兄弟に向く。
ごく小さく、従兄弟の悲鳴が聞こえた気がした。それと、俺の意識がなくなるのは同時だった。
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