僕と彼女の親子の時間

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僕は高校を卒業し、もうすぐ社会人になる。 恥の多い生涯を送ってきました、 と太宰の人間失格の言葉を言いたくなるくらいに、 僕の学生生活は荒れていた。 してはいけないと思われることは沢山やった。 不良と呼ばれる人種の人間と仲良くし、 タバコはもちろん、万引きや自転車を盗んだり、バイクや他人の車も無免許運転した。 未だに馬鹿なことやったなぁ、 と反省出来ないでいるのはまだ自分が大人になりきっていない証拠だろう。 改めて家庭環境を振り返ってみると、 自分のストッパーになるべき存在がいなかったことを実感する。 父親は単身赴任して別居していて、 共働きをしている母親は不倫までしていたらしく、 深夜まで家に帰ることはなかった。 僕の世話は4才離れた姉が良くしてくれていたが、 姉はNoをなかなか言えない、非常に温厚な人間だった。 彼女は17歳で20代社会人男性に妊娠させられて学校を辞め、 その男が責任取るような形で二人は結婚した。 やがて彼が上司との不和で会社を辞めると、 狂ったように酒を飲み、姉と子供は暴力を振るわれていた。 いわゆる、DVというやつである。 僕はそのことをまったく知らず、 顔を腫らした姉と会った時に問い詰めようやくその事実を知った。 その時に姉の自宅に乗り込み、 僕は姉の旦那の顔が歪むまで殴ってしまい、 そのことを契機に彼女らは離婚した。 父は家にいず、母は遅くまで仕事と不倫に勤しみ、近くにいた姉は意志薄弱で結婚し家を出たワケで、 誰にも僕の非行を抑えられず、とある警察官に将来を心配された。 彼と出会ったことで、僕は少しずつ考えが変わり、 不良という存在から足を洗う決意をする。 学校も必死に通うようになり、 高校に掛けあって奇跡的に就職も決まり、 後継者不足の零細企業の工員の内定を頂いて、 僕は今、家を出てボロアパートの一室に生息している。
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