1人が本棚に入れています
本棚に追加
その後、タバコを灰皿に放り込むと私はアメリカン・コーヒーを一口飲んだ。
「コングラチェェェ――!」
私は感動の余り、思わず叫んでしまう。
だが、その瞬間、周囲の視線が一気に私に向けて突き刺さる。
冷たい視線――。
主婦に、OL、サラリーマン、学生等々....。
その視線は無数にあれど、言わんとしてる事は1つだ。
――黙れ――
――である。
(おっと........私とした事が、しくじったな....。)
如何に感動の余りとは言え今のは、流石に軽率な行動と言わざる得ないだろう。
私は恭しく、周囲に一礼し大声を上げてしまった非礼を詫びると再び、着座した。
しかし....意外である。
今まで余り考えた事はなかったが、意識してみると意外過ぎる程に、コーヒーとタバコは相性が良い。
ただ....僅かなお試しで、それを結論づけるのは流石に、早計すぎるか....?
(そうだな........。
他のでも合うか、試す必要性はあるよな?)
私は残ったアメリカン・コーヒーを一気に飲み干し、カップとトレーを返却場へと返却すると、即座に店を出た。
そうした理由は、ただ1つ。
多数のサンプルを、入手する為である。
そう....タバコと言う名のサンプルを――。
そして、それより十分程が経過したであろうか?
私はコンビニで、数十種類のタバコを買い込み再び、 先程のコーヒーショップへと向かった。
タバコについては当然、領収書を獲得済みである。
これは私個人の趣味で行っている訳ではない。
会社の為に行っているのだ。
そう....会社の今後の幸ある未来の為に、私は貢献しているのである。
「アメリカン・コーヒーを、1つ――。」
私が、そう店員に言うと、店員はやや「あれ、何でまた来たの?」――と言わんばかりの表情を一瞬、浮かべつつ私が注文したコーヒーを入れ始めた。
「お煙草は、お吸いになられましたよね?」
私は、その言葉に無言で頷くと、アメリカン・コーヒーを受け取り空いてる席へと向う。
奇しくも、席は先程と同じ席である。
(縁があるようだな、この席とは――。)
私は一人納得しつつ、着座した。
しかし、まぁ....凡人に私の様な優れたアイディアマンの考えなど、分かるまい。
いや、そもそも分かって貰おうとも思ってはいなかった。
人から理解されないのは、非凡なる私の宿命と言うべきものなのだから――。
最初のコメントを投稿しよう!