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ただのジジィでは決してない。
故に人は尊敬と畏怖の念を込めて、こう呼んだ。
鬼の藤吉。
或いは追跡者【チェイサー】藤吉と――。
(ふふふ........侮るなよ若造....。
貴様の相手がただのジジィでは無い事を、思い知らせてやろう....。)
――――――
(ハッ――!?
私は一体、何をしていたのだ....?
いかん、いかん、余りに斬新な刺激だった為、私の感覚が追い付かなかったようだ....。
ん........?
何だ、あの老人は――??)
明らかに私を凝視しながら、その老人は近付いてくる....。
だが、あの隙の無い動きは只者ではない。
(一体、何者だ――?)
そんな中、私の脳裏を過ったのは幾つかの可能性....。
壱・有能なる私をヘッドハンティングしにきた他企業のエージェント。
弐・私と共にタバコとコーヒーの可能性を探求する為に現れた、孤高の老紳士。
参・私の偉業を阻むべく現れた、悪の組織の手先――。
(さて....どれが正解だ?)
私は油断なく、老人の動きを追った。
そして、私の目の前で、その老人は不意に立ち止まる。
(さあ、どうするつもりだ御老体?)
「寛いでいる所、すまないんだが少し話をして良いかね?」
突然の第一声――。
「えぇ、構いませんが私に何用でしょうか御老人?」
予想外のフリだった為、正直驚いたが、別にいきなり敵対心剥き出しで、襲い掛かってくるような事はなさそうだ。
だが........。
(な........!?
何て事だ....。
まさか、故意ではあるまいな....??
いや、そんな筈はない....。
そんな事、有り得る筈が....。)
私は、御老体の不可思議な状況を知ってしまい思わず苦悩した。
何故なら老人は、ある意味で剥き出しだったからである。
違う意味で剥き出しの老人――。
それは私にとって、ある意味脅威だった。
いや、恐怖だったと言い直すべきだろうか?
何であれ、老人は社会の窓口から布地以外のモノを剥き出しにし私に、問い掛ける。
「君は何がしたいのかね?」
老人の剥き出しにされた、しわくちゃの大きなミミズの如き、それが老人の言葉と共にプラプラと揺れた。
(な....!??
ナニがしたいのかねだと――!?)
私は、老人の発言に驚愕し身を固まらせる。
当然だ。
あの社会の窓口が故意で開けられているのなら、老人の言葉の意味は1つしかない。
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