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「スーツの意味……これで分かったでしょ?……」
ガタッ
「帰ります……」
俺は思わず席を立った
「………もう、終電無いけど?……」
「ちょっと、1人になりたいんで……」
「待ちなさいっ……」
その腕を工藤は止める
だが、俺はその手を振り払った
「1人にしてくれって…言ってるだろ……」
「変な気起こさないでよ……今日の朝には防犯カメラの映像が手に入る手筈になってる…………混乱するのは分かるけど……」
「うるさいなっ!!分かってるよっ!!……信用無いくらい知ってるからっ……」
俺は最後にそう吐き捨てて資料庫を出た
出るまでは良かったが足がそこから動かない
あー、くそっ……
力なく壁にもたれるしかなかった
先輩に当たっても一緒だろうがっ………自分が嫌んなる……
それから俺はどこへ向かっただろう
あんまり覚えていない
先輩はこの事に気づいて……だから俺を帰えそうとしたのか……
とりあえず見知らぬバーで1人、酒を飲んでタバコを吹かしていた
いくら飲んだか覚えていないが気づけば辺りは朝になっている
閉店の時間が来たので店の外へ
不眠と酒の影響か重い足取りのまま自宅へと電車を乗り継ぐ
家に着くと一先ず休みの連絡を入れた
風呂へと入り一気に眠気を吹き飛ばす
そしてすぐに私服に着替えると出発の準備を完了させた
電車を乗り継ぎ都市部から離れていく
郊外を出ると車窓からの景色が山並み豊かな緑の生い茂る景色へと移り変わっていった
目的の駅で降りた俺は一先ず近くのカフェに入りコーヒーとモーニングを頼んだ
その時、ふとスマホを取り出してみる
そこには数十件と連なった工藤からの不在着信メッセージが
今も鳴っている
だが、それを返すことなく俺は先輩がいつもやる所作でコーヒーを一口啜った
確かに……落ち着く……
心を落ち着かせ、冷静さを取り戻していく
コーヒーを飲み終わると喫煙室で一服した
よし……もう大丈夫だ……
決心を決めた俺は店を出ると歩き続けた
止まれば後悔が押し寄せて来そうだったからだ
進む道はコンクリートから砂利道へ
そして石段へと変わる
山の麓に造られた石段を登った先には神社が一つ
その脇を通り抜け奥の霊園へと足を運んだ
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