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濃い紺色のピシッとしたスーツ姿の男は、喫煙所で1本のタバコをふかしながら、天井に消える煙を見上げていた
匂いには、何千・何万と種類がある
好みは人それぞれ
万人ウケする匂いなんて無い
特にタバコなんてそうだ
今の時代、喫煙者は肩身の狭い思いをしている
やれ禁煙だっ……それ禁煙だっ……
匂いに加え…有害だの何だの………
………もっと喫煙者に自由をっ!!……
そう心の中で嘆いても、現実は変わらない
「灰嶋~っ!!(はいじま)……」
タバコをふかしていた俺の肩はその女性の声にビクッと震える
振り返ると奴がいる
そんな気分だ
「はっ、はいっ!!……なんですか?亜豆(あずき)先輩……」
タバコの火を消し、振り返るとそこには黒髪ショートで、明るいグレーのスーツを着こなした女性の姿が
整った綺麗な顔立ちなのだが、ズカズカとしたその足取りと表情が怒りに満ちているのが分かる
そして、目の前で立ち止まるといきなり頭を叩かれた
「イッテッ!!……」
「下の名前で呼ぶなっ!!……いつまで学生気分だっ!!……もうすぐ2年目なんだから…社会人として自覚持ちなさいっ!!……」
「いやぁ~……呼び慣れた名前なんでつい……」
頭を掻く俺に再び亜豆は腕を振り上げていた
「うぉわっ!!ちょっ!!…すいませんすいませんっ!!……はいっ!!何でしょうか……工藤さん……」
「緊急会議よ……例の連続通り魔事件の……私達も捜査に参加する事になったから……」
「え?……そうなんですか?……」
「じゃなきゃ呼びに来ないでしょうがっ………電話くらい…すぐ出ろってのっ!!……」
語尾の勢いと共に繰り出される蹴り
それはお尻にクリーンヒットする
「さっきから痛いですってっ……」
「出ない奴が悪い……」
そう言い残し、またスタスタと歩いていく工藤
俺はトボトボした足取りで、その3歩後ろを着いて行った
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