愛の力

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「マジかよ。俺、ずっと日曜日はデートしてるつもりだった」 二人で並んでベンチに座った。目の前の噴水は夜だからか、水を噴き出さない。それをじっと見つめた。 「えっと、ごめん。私はずっと単に映画好きなんだと思ってた」 かなり気まずいけど、彼に思われていたと知って私は舞い上がっていた。 「あー、こっちこそゴメン。変な勘違いして。すごい自惚れてた。『また誘って』って言われて、瀬戸も俺に惚れてるんだなんて思って」 長谷部くんが恥ずかしそうに首の後ろをかいた。あれ? なんか誤解してる? 「え? いや、自惚れじゃないよ?」 「え?」 ……どうして、こう上手く伝わらないんだろう。 「その。俺はもうずっと二年の時からおまえに惚れてるんだけど。おまえは?」 「私も。ずっと長谷部くんが好きだった」 長谷部くんが大きく息を吸い込んで、フ―ッとゆっくり吐き出した。 その息が白い霞のように夜の中に漂っていく。 「じゃあ、おまえは俺の彼女ってことでいい?」 「うん」 「これからも日曜日はデートしてくれる?」 「うん。映画だけじゃなくて、いろんなところに行きたいな」 「良かった」 安心したように何度も頷くと、長谷部くんはベンチから立ち上がった。 「遅くなっちゃったな。帰ろう」 長谷部くんがそう言って差し出した左手に、私はおずおずと右手を重ねた。 すかさずキュッと握られた手から、ジワジワと嬉しさがこみ上げる。 「もう、さ。他の男からなんにももらうなよ」 ため息交じりの呟きに、多賀くんがくれたカフェオレのことだと気づいた。 「もしかしてヤキモチ?」 「うるせえ。有働のことだって、随分ヤキモキさせられたんだ」 「ふーん。私だって、保奈美と腕組んでる長谷部くんなんて見たくなかったけど? 胸押し付けられて、デレデレ鼻の下伸ばしちゃって」 口が勝手に動いていた。自分がこんな嫉妬深いとは思わなかった。 「デレデレしたのは、おまえがチラッと見て拗ねた顔したのが可愛かったから。あいつの腕なんかすぐに振り解いたし」 「ふーん」 可愛いなんて言われて照れたのと、まだちょっとスッキリしない気持ちを持て余していた。
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