紫煙の向こう

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初めて長谷部くんと一緒に見に行った映画は激しいベッドシーンがあって、男友達と二人で見るには気まずかったけど面白かった。 見終わって女子トイレから出ると、長谷部くんは灰皿の近くの壁にもたれてタバコの煙をくゆらせていた。 背が高いから、そんな姿も様になる。 私はすぐに近くに行かないで、遠くからこっそりと彼を見ていた。 「お待たせ。面白かったね。また誘って」 長谷部くんが短くなったタバコを灰皿に押しつけたタイミングで、私は声をかけた。 「ん。じゃあ、日曜日はこれにしよう」 彼が近くに貼ってあるポスターを指さすので、首を傾げた。 「なんで日曜日?」 せっかくの休みの日なのに? 平日の学校帰りでいいのに。そう思った。 「これ、今度の日曜日までだから」 「あ、ホントだ」 それ以来、私たちは毎週日曜日に映画を見に行くようになった。 映画を見終わると、来週の分の前売り券を買う。 それから、二人でお昼ご飯を食べてウインドーショッピングをした。 長谷部くんは口数は少ないけど、ポロッと言う冗談がすごく面白くて一緒にいて退屈しない。 平日もほとんど同じ講義を取っているから、休み時間は一緒に教室移動する。 気がつけば、私は平日も休日も毎日長谷部くんといつも一緒にいるようになっていた。
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