三月の蛍

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 あれから、三年。  もう落ち着いて、笑顔もすっかり戻り、何事もなく穏やかに日々は過ぎている。  それでも、今も毎日煙草には灯がともる。  この三年。  私にだって、耐えることはあった。  支えてもらうことも叶わず、一人で。  あなたが望み、私が望む、未知の幸せを得るために。  もう、一人でやれることも尽きた。  この夏、ずっと一人で通っていた婦人科に、初めて二人で行き、  「もう授かる可能性はない」 と言われたのは、秋のことだった。    それ以来、肌を合わせたことはない。
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