三月の蛍

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 いつも通りの軽快な掛け合い。  誰が見たって、仲のいい二人。  自分たちでもそう思う。  毎日幸せだと思う。  でも。    ほんの僅かな隙間に気づいているのは私だけ。  その隙間風を受けて、冷えていくのも、私だけ。  手に持つカップの中で、暗い水面が蛍光灯の灯りを浮かべて揺れている。  ゆらゆらと歪むその光は、何かに似ている気がした。  これからもずっと、こんな時間が続くんだろうかな。  それは、幸せなのに、果てしない。
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