彼女が現れるまで

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声に遅れて、恭一の前に女性が姿を現した。 「何名様でしょうか?」 愛想良く、女性店員は恭一に言葉を促した。 「二名様で」 咄嗟に出た答えだったが、女性店員の言葉につられて『様』を付けてしまったことに、恭一は敢えて気付かないふりをした。 女性店員はさほど気にしていないらしく、恭一をボックス席へと案内して、来た通路を引き返して行った。 初めて入った喫茶店なので、恭一は今一つ馴染めない。 ポケットの中から煙草を出し、一本を口にくわえて火を点けようとした。 その時―――――
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