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さて、そんなあたくし溝口晶、大学3年生の向かった先は、先輩のメモに書いてあった場所。
これからあたしの生徒となる高校生がいる自宅…―-
と言いたいところだが、あたしはその建物、ううんその建物を囲むどこまで続いてるんだって位にずーっと伸びている門を見た後、その門の向こうに聳え立つ自宅らしき宮殿を見つめた。
「え、ホントにここ?て言うか、日本にこんな建物建てていいの?」
唖然某然、口をあんぐり開きながらあたしがボケーとその門の前に突っ立ていると、すぐ目の前の門に付いていたインターフォンから声が聞こえた。
「溝口晶様ですか?」
「え、は、はい?て、え?」
名前を呼ばれて返事をしてみたものの、突然そんなところから声が聞こえたもんだから、ビョンと身体が飛び上がるほど驚いた。
な、何であたしがここにいるってわかったの?
つうか、何であたしの名前知ってるの?
「監視カメラに映っておられましたのを拝見しておりましたら、とてもお困りになっているご様子でしたので、僭越ながらお声をかけさせてもらいました。
ちなみに、今日こちらのお屋敷にお見えになるお客様は溝口様だけでしたので」
インターフォン越しから聞こえる落ち着いた声。
監視カメラ…と言う言葉を聞いて思わずそれを探してみたら、確かに門の上の辺りにそれらしき物体を見つけた。
レンズがこちらを向いているので、
「ホント、見えてんのかなぁ」
つい好奇心に駆られ、そのレンズに向かって手なんか振ってみたりした。
ハッと我に返ったのは、インターフォンの向こうから聞こえてきた、クククと遠慮がちだけれどもしっかりとした笑い声のせい。
「クク…失礼しました。今門を開けますのでお入り下さい」
くそー初っ端からやらかしちゃったよ、あたしってば。
いい大人のクセになにやっんだよと赤面しつつも「はい、わかりました」と返事をすれば。
自分の背の倍はありそうな黒い鉄格子の門が、キキキ…と軋む音をさせて内側へと開いた。
あたしはゴクリと唾を飲み込むと、思い切って中へと足を踏み入れたのだった。
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