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「入れ」
中から聞こえてきた声は、バリトンの耳に心地よく響く声。
一度聞いたら忘れられないような、その艶のある声に驚きつつ聞きほれていたら、田口さんがドアを開けてあたしを見つめて立っていた。
「さ、どうぞお入り下さい」
「あ、ありがとうございます」
ハッとなって慌ててあたしは促されたままそのドアをくぐり中に入る。
中に入って高い天井と、広すぎる室内に「うわ~凄い」と知らず感嘆の声を上げていた。
「それでは、私はこれで失礼致します」
「え?」
声に驚いて振り向けば、深々とお辞儀をして田口さんはドアの向こうへと消えてしまった。
パタンと静かに閉められたドアをジッと見つめていたら、カツンと物音と人の気配を感じてあたしは咄嗟に振り向いた。
そして、そこに立っていた白い長袖のシャツに黒のスラックスとどこででも見かけるような普通の服装の男は、自分の目を疑いたくなるほどの超美青年だった。
襟足に掛かるくらいに伸ばされたダークブラウンのサラサラ髪と長めの前髪から覗く二重の涼しげな瞳。
日本人離れした凹凸のはっきりした顔形とモデル顔負けのスタイル。
その彼が放つ、無駄に爽やかな眩しい笑顔に、あたしの視線は釘付けだった。
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