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「ありがと……最高の卒業式だったよ」
「いや、お前は来年だろう」
左手に卒業証書、左胸には卒業生全員がさしていた模造花。
どっちも俺のものだ。
皆が帰って空になった教室に二人。
そして、彼女の演技が俺の心に悲しさを呼び込む。
「私も……先輩と卒業したかったの」
「ごめん……」
心の声を漏らし、涙を浮かべた。
彼女を残して、旅立って行く、先に進んでしまう。
会えない訳ではない。
けれども、心が締め付けられる。
伝わる彼女の悲しみがチクリと俺の胸に刺さった。
「いっそのこと先輩も来年、卒業しましょうよ!」
「無理だよ」
「……ですよね」
「その代わり来年、俺も制服で卒業式に来てやる。気分だけも一緒にな」
「ほんとですか!?」
彼女は花が咲いたように、ぱあっと笑顔になった。
改めて考えてみると恥ずかしいな。
でも、彼女の笑顔を見ると、なかったことには出来ないと思った。
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