第1章

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「ありがと……最高の卒業式だったよ」 「いや、お前は来年だろう」 左手に卒業証書、左胸には卒業生全員がさしていた模造花。 どっちも俺のものだ。 皆が帰って空になった教室に二人。 そして、彼女の演技が俺の心に悲しさを呼び込む。 「私も……先輩と卒業したかったの」 「ごめん……」 心の声を漏らし、涙を浮かべた。 彼女を残して、旅立って行く、先に進んでしまう。 会えない訳ではない。 けれども、心が締め付けられる。 伝わる彼女の悲しみがチクリと俺の胸に刺さった。 「いっそのこと先輩も来年、卒業しましょうよ!」 「無理だよ」 「……ですよね」 「その代わり来年、俺も制服で卒業式に来てやる。気分だけも一緒にな」 「ほんとですか!?」 彼女は花が咲いたように、ぱあっと笑顔になった。 改めて考えてみると恥ずかしいな。 でも、彼女の笑顔を見ると、なかったことには出来ないと思った。
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