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「タバコを吸う女は嫌いだな」
「私もタバコ吸う男って大嫌い」
二人はおいしそうにタバコの煙を口から吐き出した。
「俺たちなんで結婚したんだ」
「まだ若い頃、学生街の喫茶店でブルーマウンテンを飲みながら、おいしそうにタバコを吸ってたあなたがカッコよくて、私からアプローチしたのが最初のきっかけね」
二人は二本目のタバコに火を着けた。
「思い出したよ。確か君はモカが好きだった。そしてタバコはマルボロメンソールライト。あの頃の君は可愛かったな」
「あなたはショートホープ。今も変わらないわね」
大きめの灰皿の吸い殻が山になってる。
「今、鼻から煙出したろ。わー嫌だ」
「あなたは花粉症だから、鼻が詰まってて鼻からは出さないけと煙を吐きながら今オナラしたでしょ」
「悪いけどコーヒー淹れてくれないかな。もち、ブルーマウンテン」
「あら、ブルーマウンテン切らしちゃった。モカでいいかしら」
タバコをくわえながら鼻歌まじりにコーヒーを淹れる女と新聞を読みながら続けざまにオナラを放つ男。
「あの頃に戻りたいわね。もう一度やり直したいわ」
「また、俺と結婚するか?」
女は咄嗟に睨んだが男は知らん顔でタバコの煙で輪を作って遊んでいる。
くわえタバコの灰が男のコーヒーに落ちたが素知らぬ顔で男に差し出す女。
「あなた昔、生まれ変わっても俺はお前と結婚するって言ってたわね」
「ああ、言った。俺の人生最大の勘違いだ。今でも後悔している」
換気扇が回っているにも関わらず部屋はタバコの煙で充満していた。
「ねえ、別れましょうか。私タバコを吸わない男の人と再婚するわ」
「そうだな、別れようか。俺もタバコを吸わない女と再婚するよ」
しばらくして離婚した二人は今、
「再婚した女はタバコを吸わない代わりに、俺に隠れて他の男のアレを吸ってやがった。名前?べっきいだったかな」
「男って最低ね。タバコを吸わない代わりにヤバい薬をパイプで吸ってたわ。名前?確かキヨハラって言ってた」
二人はタバコの匂いの染み付いた、住み慣れた我が家に戻っていた。
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