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プロローグ
私は昔から月を眺めるのが好きだった。
息子を産んだ日は昼間に月が浮かび、夕陽は人生で一番鮮やかな色彩を放っていた。
娘を産んだ夜の月は満月で、人生で一番輝いて見えた。
1日の家事を終えてベランダで一息つく。今日も月が見える。部屋の中から夫と遊ぶ小さい子供達のはしゃぐ声が聞こえる。ブラックのコーヒーを飲みながら私は至福の幸せを味わった。
時は流れ、いつしかリビングから家族の団欒は消えた。それでも私はひとりでベランダに出てコーヒーを飲んだ。月は私を見守っていてくれた。
運命の人は存在すると思いますか?
神様が運命のふたりを引き合わせてくださるのか。それとも想いを重ねるふたりがお互いの運命の人になっていくのか。
月が一年で最も美しいとされる中秋の名月の少し前、私がコンビニで拾ったのは、
鍵と彼と、罪と罰、
それから……
いつも月が私を眺めていた。
私はいつも月に願っていた。
どうか
どうか
幸せに
彼の
夢が叶いますように
彼女は月を眺めるのが好きだった。
彼女のおかげで俺も月を眺めるようになった。
月は何も語らないが、不思議と気持ちが落ち着く。彼女と繋がっていっている感覚になる。
同じ月を眺めているであろう彼女を想う。
彼女のために
俺には何ができる?
彼女の笑顔のためにならなんだってする
彼女が
幸せに笑っていられるのなら
2016.3.15up
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