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両側から食べ始めたケーキもまだ中央部分は残っていた。
「そうだ」
美和さんが何か思い出したようにベッドから出ていった。
「これ、気に入ってもらえるかどうかわからないんだけど」
「俺に? プレゼント? 」
「うん」
「開けていい? 」
「どうぞ」
綺麗なラッピングを開けるとDVDだった。その年のドイツのブンデスリーガで優勝したドルトムントのDVDだった。
「本当は好きなチームとか聞きたかったんだけど、上手に聞き出せなくて。よかったかな?」
ドルトムントは日本代表の選手が移籍したチームだ。どこで買ってくれたんだろう。どこで調べたんだろう。ドルトムントはもちろん好きなチームのひとつだが、それより彼女が慣れないサッカーのDVDを買ってくれたことが何より嬉しかった。
「嬉しいよ。こんな嬉しいプレゼント初めてだよ」
「よかった、好きじゃないチームだったらどうしようかと心配だったの」
そう言って美和さんは胸元を押さえながらふーっと息を吐いた。
「さっきの悪いことしようとしてたのって」
「同じDVD持ってたらどうしようと思って……」
と首をすくめて美和さんが笑う。
「じゃ、俺からも」
机にしまってあるリボンのかかった小さい箱を渡す。
「ありがとう。開けていい? 」
頷きながら、彼女の反応を待つ。ドキドキするものなんだな。
「わ! ネックレス。綺麗! 」
美和さんは箱から取り出して、顔の位置まで持ち上げて照明にかざす。
「つけてあげる」
そう言ってネックレスを受け取り、美和さんにつけてあげた。彼女がネックレスの箱を見ている。
「4℃のなの? 嬉しい。好きだけど、持ってないブランド。どうもありがとう」
その笑顔が見たいんだ。じんわりと体温が上がるような温かい美和さんの笑顔。
「よかった」
俺もホッと一息。
「デザインもとっても好き。選ぶの上手だね?」
それは小さいけれど一応ダイヤモンドのネックレス。予算の都合上小さいものになってしまったけれど。
「店員さんにいろいろ聞かれた。チェロキーを運転したいって言う男前の彼女だって言った」
「オトコマエって……」
「きっと花の形とかじゃないんだろうなって思って。気に入ってもらえた? 」
「もちろん! すでに宝物! 」
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