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はじまり
ふと時計を見上げると、1時をまわっていた。
ーーハラ減ったな。
3時間ほど見つめあっていたノートパソコンを閉じ、ゆっくりと立ち上がった。
向かい側の後輩は、マグカップを両手で持ち、どこか遠くをみつめていた。
ーーここんとこ、あいつも帰りが遅いからなぁ。
背もたれにかけていた上着を羽織ったところで、後輩が気づいたらしく、
「あ、お疲れさまです。今からですか?」
「ああ。なかなか終わらなくてな。ちょっと出てくる。お前も無理すんなよ」
「大丈夫ですよ! 先輩、この件が片付いたら、飲みに行きましょうよ!」
「そうだな、店は任せる。じゃ」
「行ってらっしゃい」
一歩部屋から出ると、まだ肌寒い。
エレベーターで1階まで降りると、より寒さを感じた。
裏手の通用口から出ると、小さな喫煙スペースがある。
胸ポケットから、アメリカンスピリットの箱とライターを取り出した。
ーー忘れてた。なかったんだ、くそ。
デスクにストックがあるが、戻るのも馬鹿らしい。昼飯のついでにタバコを買おう。
空箱を握りつぶし、ごみ箱に投げ入れた。
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