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私は、平静を装って言って見た。
上念さんからおごってもらい続けてきたブラックコーヒーについて文句を言って、恥じしらずのついでに告白までしちゃいますよ、というような、よくわからない理由づけを自分の中でしてから、言ったんだ。
味覚の異なる私たちは、同じブラックコーヒーを同じように美味しいとは思えないけど、だからといって分かり合えないなんて決めつけちゃいけない。
分かり合うために努力することはできるもんね。
上念さんは、耳たぶまで真っ赤になった。
「なんか、立場、逆転みたいだね……。」
そう言って笑う彼。
「僕の奥さんになってくれた時のために、本当に好きな飲み物、教えてくれる?」
私は彼に幸せいっぱいの心を届ける。
「本当は私、砂糖とミルクたっぷりの、あったかいカフェオレが好きです。」
「そっか。わかった。これからは、それにするな。」
そう言って私たちは屋上の欄干にもたれ、二人で肩が触れ合うくらいにちょっとだけ寄り添って、二つおそろいに冷めかけたブラックコーヒーをすすった。
砂糖もミルクも入っていないのに、その時飲んだコーヒーは、ほんのりと甘くておいしかった。
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