くもの喫茶店

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ドアが開いても視線をこちらに向けない店員に小田桐は、耳は聞こえているのかなと思った。 「すいません。コーヒー頂けますか」と声をかける。 するとやっと男性がこちらを向き、 「はいどうぞ、お好きな椅子にお座りください」と声をかけてくれた。 そうしてやっと小田桐はほっとして店内に入ると、カウンターの席に腰かけた。 小田桐は、席に着いた途端驚いた。 今まで喫茶店に入ってカウンターに座ったことがないのだ。 なのになぜカウンターに座っているのか不思議だった。 まるで、導かれるように座っている。 小田桐は、カウンター内の男性を見て綺麗な男だと思いながら 「あのう、ブラックでお願いします」と声をかける。 すると店員は、「はい、わかりました。お客様、失礼ですけど、お顔の色が悪いようですね。何か悩み事でもあるんじゃないですか」と声をかける。 小田桐は、店員に自分の心の内を見透かされている様なそんな気がしていた。 「ああ、そう見えるかい。人生いろいろあるよね。でも疲れちゃってさ。何にも上手く行かないからさ」と言うと店員の前で大きなため息を吐いていた。
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