1人が本棚に入れています
本棚に追加
しっかりとフードを被った、メイド服の女性。『嘘吐き兎』のエンちゃんが、粘土や接着剤その他一式入った木箱を持ってきてくれたけど、乱暴に直されると痛いのに変わりはない。
「また、『ヤドカリ』の暴走を止めたんですか?まさか両手とは思いませんでした。せっかく淹れたコーヒーも、無駄でしたか」
「おいしいよね!コーヒー」
よくびっくりされるけど、ソフィちゃんにとって、他人の持っているコーヒーカップを足で受け取って口まで運ぶってのは、人間が手を使って物を食べるのと変わらないくらい簡単なこと。関節も割と自由自在だからね!
べんりでしょ?もともとは人間で、今は人形の体、なんていうと、びっくりされるけど。ほら。便利な新しいものが出たら、それがほしくなる心理というの?より早く走れる足。より器用に動かせる指。より丈夫な体。より敏感な鼻や舌。より明晰な脳。そんな風に、ケータイを機種変するような感覚で、使いづらいものを取り換えていった結果なのにねー☆
そんなわけで、人間とはもう言い切れないソフィちゃんは、半裸でおとなしく手当てを受けているわけ。あー、ひ・ま・だ!!
「うわ。エンちゃん、りゅーすけ達帰ってきそう。ちょっと足止めしててー」
「あー、そういえば、煙管あそこに落としてきちゃった。どーしよ」
お気にだったのになぁ、あの細工入りの煙管。人形だし。飢えて渇いて死ぬこともないし、人間が生命維持のために必要とする行為の大半をソフィちゃんが必要としないのは、確かにそうだし、煙草のなんて不要の極みなんだけど。
嗜好品ってのは、大好きだよ。砂糖に始まって、酒、たばこ。まあ、ヤバげなドラッグには、手を出さないようには気を付けてるけど。
だって、必要のないものをわざわざ摂取する。そんな無駄な行動って、非合理的で、とっても人間ポイじゃん?
「まぁ、もしかしたら。能力者や《事情》持ちも、そういうモノだったりするのかな?」
「…………………脈絡なく、話が飛びましたね」
エンちゃんの、捨て台詞っぽい独り言は、気にしないよ。
「現実を直視しないのは、無駄の最たるところだけど。存在しないものをあえて隠れて存在させておけばたたたたたたたたあぁ!?」
乱暴にねじ込むのやめてほしいなあ。断面を、無理やり引っ付けようとするってかなりむちゃくちゃじゃん。
そんなこんなで。てきとーに、いつも通り午後は過ぎる。
最初のコメントを投稿しよう!