第一章

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 ――しかし、気になる。  最後に少女をもう一度確認しようと振り向くと、少女がこちらを向いていた。  ――な、なんだ!?  その少女の瞳は、まるで何もかもを引き込む渦のような瞳。そんな瞳であった。  はっきりと見えたわけではないが、 身体が、 脳が、 神経が、 その瞳に引き込まれ、 本能が身の危険を察するような恐怖を抱いた。  ――なんだ。 あれは。  訳もわからず、自転車で逃げ出した。 走る。 走る。 走る。 なぜ、逃げ出したかわからなかった。 一つだけわかったことは、動揺した心臓の高鳴りが止まらなかったことだ。
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