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そう、トマの話をしましょう。
トマはムーランという男と、ルシュ―ムという女の間に産まれた。
ムーランはある酒場でよく飲んでいたのだが、酒を飲むと暴れてしまう性格だったようだ。
ある日も、酒場がめちゃくちゃになってしまうくらい暴れ出した。
だが、酒場の常連客の青い髪の顎鬚を携えた男と、たまたま酒場に来ていた金色に赤目の男によって抑えられたようだ。
また、その中に、女も交じっていたとか。
黒髪を靡かせていたその女は、旅人の格好をしていたようだ。
その女は何処へ行ったのか、それはわからないが。
酒場の店主の女性と、その常連客は恋仲だったとか、そうじゃないとか。
店主は銀色の短い髪に青い目をしていて、確か名前はスカルモ、といっただろうか。
後にその二人は結ばれたという話を聞いたそうだ。
一方、トマの母親であるルシュ―ムは、売女だったようだ。
ムーランは茶色の髪と目、しかも隻眼だ。
トマの金色の髪はきっと、母親のルシュ―ムの遺伝だろう。
ルシュ―ムは金色の髪に、青い目をしていたとか。
売女ときくと、正直良い印象はないが、ルシュ―ムも私と同じ境遇だったらしく、それを助けてくれたのが、きっとムーランだったのだろう。
酒癖の悪かったムーランも、ルシュ―ムがトマを身篭ってからというもの、酒を控えていた。
売女として罵られていたルシュ―ムは、トマを連れて街を出たようなのだが、ムーランは残ると言い張ったそうだ。
そこでの暮らししか知らないムーランと、売女としてあちこちの世界を見てきたルシュ―ムは、その後出会うことはなかった。
だからこそ、私はトマと出会う事が出来たのだが。
私のお腹には、生命が出来た。
そのことにトマは喜んでくれたし、女の子だと聞いて、更に喜んだ。
私に似るのだろうか、それともトマに似るのだろうか、とても楽しみだった。
予定よりも早く生まれたが、健康体で出てきた赤子は、トマに似た綺麗な金色の髪と、茶色の目を持っていた。
「見て、あなたにそっくり」
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