1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえトマー。今度はいつ会えるのー?」
「モナファ、しばらくは無理だって言ってるだろ」
「なんでー?赤ちゃん出来ちゃったからー?トマがちゃんと避妊しないからじゃない」
「うるせぇな」
「それに、身体売ってる女助けるなんて、馬鹿じゃない?女だってそれなりに楽しんでんのよ、それ。放っておけば良かったのに」
「黙ってろよ」
トマが、モナファに覆いかぶさり、口を塞ぐ。
時折、モナファの艶やかな声色が耳に響く。
モナファは長いカールのかかった紫の髪をベッドにちらつかせながら、真っ赤な口紅でトマを誘う。
ベッドは二人の重みで軋み、沈んで行く。
「ん、あら?帰るんじゃなかったの?」
「ああ?誘っておいてそれか?」
「ふふっ。自分の子供が危ないってときに、よくこんなこと出来るわね」
「それを知っていて、よく俺を誘えるな」
「あら、じゃあお互い様ね」
絡み合う吐息は、やがてひとつになる。
時間だけが過ぎ、ようやくその熱も収まったとき、トマはやっと身体を起こす。
脱ぎ捨てた服を手に取ろうとすると、背中からお腹に向かって回された腕によって、阻まれる。
「モナファ、いい加減にしろ。終わりだ」
「私と同じ髪の女のとこに行くの?罪悪感とか感じないのね?」
「余計なお世話だ」
腕を外すと、モナファはシャワーを浴びにシャワールームへ向かった。
トマは乱れた髪や服を整え、鏡でチェックする。
すると、シャワールームから声がする。
「奥さんにバレてないのー?」
「さあな」
「あら、そう」
この時、モナファはトマとパールが別れることを望んでいた。
だからこそ、わざと匂いはつくように、香水をつけていたのだから。
「(バレてないわけないと思うけど)」
心の中では思っていても、言わない。
シャワールームから出れば、すでにトマはいなかった。
部屋代を置いて、書き置きもなく。
濡れた髪の上にタオルを被せたまま、モナファは薄く笑うのだった。
最初のコメントを投稿しよう!