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お腹から血を流して倒れて行くトマは、痛みからか、苦痛に歪んだ顔をする。
それを眺めながら、モナファは残りのサンドイッチを食べた。
キッチンからワインを持ってくると、グラスに注ぐことなく飲みだす。
そして、そのワインをトマに口づけて飲ませた。
すでに息絶えていたトマの顔周辺には、ワインとも血とも言えない赤い液体が広がっていた。
モナファはそのまま優雅な歩きで去って行った。
三日後、帰ってきたパールによって発見されたトマの周りには、烏がいたそうだ。
それから、いつもの匂いも漂っていた。
犯人は未だ捕まってはいないそうだ。
しかし、それは今の私には関係ないことだ。
私の夫は殺された。
私の娘は病死した。
私は孤独になった。
それだけが事実。
それから、これは私だけが知っていること。
トマの遺体の唇には、真っ赤な口紅の痕がついていた。
ねえ、私、あなたが羨ましいわ、トマ。
だって、今頃、ヴィルと一緒なんでしょう?
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