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「ホントに、すごい雨だわ・・・雨戸を閉めたほうが良いかも・・・」
夢子さんが立ち上がると、愛がほふく前進でついてきます。
ついでに、せっかくピーンと立ち上がった耳は、仔犬だったころよりもぺしゃんこになっていました。
ふさふさしていた尻尾は、足の間に隠れて姿が見えません。
「愛? どうしたの?」
愛は、ほふく前進のままブルブル震えて言いました。
「ゆ、ゆめこさん、い、かないで・・・おねが・・」
最後まで言い終わらないうちに外がピカッツーと光り、その後大きな太鼓をたたいているみたいに、ゴロゴロゴロゴーと鳴りました。
「ぎゃあぁぁぁ~」
愛はその場でブルブルしながらうずくまってしまいました。
「あらあらあら・・・愛は雷が怖いのね?」
夢子さんがそう優しく尋ねましたが、愛には返事をする余裕なんてありません
ぎゅっーっと強く目をつむり耳も閉じて、尻尾も丸めて小さくなって震えているだけです。
こうしてみると、大きな毛糸玉がわさわさと揺れているように見えます。
その姿はとても可愛らしかったのですが、愛があんまり真剣に怖がるので、ゆるんでいた口元を引き締め、優し声で愛を呼びました。
そしてその体を持ち上げて、ひざの上にのせました。
「大丈夫よ、愛。 このお家は雷で壊れたりしないから・・・雷はね、おちなければ怖いものじゃないのよ。家の中にいれば大丈夫よ」
何度もそう言い聞かせ、背中をさすり、頭を撫でてやりました。
それでも、稲妻がピカーッっとする度に、雷が鳴る度に
「キャウン、キャウン」
と鳴き続けるのでした。
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