白と黒。

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「煮詰まってるみたいだな」 頭上から声がした。 先輩だ。 「煙草の代わり」 先輩はわたしに珈琲を押し付けてくる。 「珈琲は煙草の代わりになりません」 そう言いつつ、わたしは珈琲を受け取る。 黒い。 ミルクは入っていないようだ。 わたしは珈琲を流し込むようにして一気に飲み干す。 「珈琲は煙草の代わりにならない……か」 珈琲牛乳より白いソレを先輩は珈琲と言い張り、飲む。 「煙草も珈琲の代わりにならないんだからいいでしょう?」 わたしは煙草に火をつけた。 「ここ、禁煙……」 「あ」 わたしは慌てて携帯灰皿で煙草を消す。 「今度、墓参りでも行くか」 先輩はぽつりと呟く。 「そうですね」 わたしは頷く。 「あ、先輩。でもね、わたし、珈琲は煙草の代わりにならないって言いましたけど、先輩って珈琲じゃなくて珈琲牛乳ですよね」 先輩はわたしの言葉に苦笑した。 この人とのキスはきっと苦くない。
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