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仰向けに横たわる私に馬乗りになり、今にも喰らいつきそうな綺良。とにかくガクブル必至である。
「ならどうしてさっき、アイツの前で頬を紅色に染めていたんだよ」
「っ、」
流石よく見てるなあもう。そこまで気付かれてたとか恥ずかしすぎる、ふいと頬を向けた。
「だだって、さっきのひとが言ってた〝聞いていた以上に美しい〟って、出逢った時綺良が言ってくれた台詞と同じだったんだもの──」
綺良は一目惚れだったと言っていた。その台詞から私たちの全てが始まったのだと思い出すと、妙にドキドキしてしまったのだ。
「──、おまえは何でそう、いきなりしおらしくなるんだよ……可愛すぎだろう」
そう言って、目の前の唇はふぅと一つ深呼吸する。そして釣り上がっていた眉はやがて八の字に歪んだのだった。
「……思えばおまえは俺しかオトコを知らないんだよな、いいのかそれで」
散々奪っておいて、子供まで作っておきながら、よくもまあそんな初々しいことが言えたものだ。
それでも、ずっとそんな思いがあなたの片隅にあったのかなと思うと、胸がきゅんと縮まった。
「いいもなにも、それがいい」
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