302人が本棚に入れています
本棚に追加
「……」
課長の右手が私の顎を持ち上げる。
無理矢理あわされた、視線。
レンズ越しに見える瞳はやはり冷たく感じる。
「満足かと聞いているんだ」
「……満足、です」
震える声に泣きたくなる。
そんな私になぜか、課長はふっと笑った。
「嘘つきが」
「嘘じゃ……!」
突然押しつけられた柔らかい唇に、思わず目を見張る。
ゆっくりと課長は離れると、にやりと笑った。
「なんだ、知らないのか?
キスするときは目を閉じろ」
「し、知ってます!それくらい!
……じゃなくて!」
すました顔して課長は私を見下ろしている。
その手がゆっくり私の頬を撫でると、親指で唇をなぞった。
「君が望んだことだろう?」
「私は、一言も、そんなこと」
見上げた視線の先には、妙に艶めかしい課長の顔。
最初のコメントを投稿しよう!