課長と煙草と私

12/27
前へ
/27ページ
次へ
課長は無言で置いてあったチョコのパッケージをとると乱雑に包みを開け、中に入っていたチョコを私の口へと押し込んだ。 「……!」 再び押しつけられた課長の唇。 強引に唇をこじ開けられ、深くなっていく。 思わず目を閉じると、ぎゅっと強く抱きしめられた。 口の中のチョコがなくなると、唇が離れる。 文字通り、甘い吐息が私の口からも課長の口からも落ちた。 「こんな……」 上がった体温のせいか、課長の眼鏡が僅かに曇った。 そのせいで、どんな顔して私を見下ろしてるのかわからない。 早い鼓動、熱い身体。 掴んでいる、課長のスーツの襟を手放せばきっと、私の身体は崩れ落ちる。 「残りも君が、食べさせてくれるんだろう?」 僅かに持ち上がる、課長の口角。 私を見下ろす、冷たいシルバーフレームの、眼鏡の奥の冷たい瞳。 なのに私は……。 「なんで……課長……」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

302人が本棚に入れています
本棚に追加