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荒い息で課長を見上げる。
課長の支えでかろうじて立っている状態。
……わかっただろって、なにが?
考えようにも思考は空回りするばかり。
課長の片腕がそっと私の身体を滑り降り、膝の裏に添えられた。
気が付いたときには抱きかかえられ、ベッドに沈められてた。
「まだわからないか?」
上からじっと見つめる、課長の瞳。
そっと眼鏡を外してみたら、熱く潤んでた。
再び重なった唇に思考は飛んでいく。
昨晩あんなに泣かされたのに、またまだ日も高いというのに散々泣かされた。
何度も切なげに「緋羽」と呼ばれ、口から出そうになった言葉を必死で飲み込む。
云わないから泣かされるんだとわかっていながら、口にできない。
……たぶん、意地、みたいなもの。
最初から課長に、いいように弄ばれてるのが気に入らない。
いつも余裕で、そういうのがむかつく。
だから、これだけは、課長の口から云わせたい。
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