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シュルシュルと片手でネクタイを抜きながら、課長の唇が重なる。
離れるとにやりと笑って一口煙草を吸って消し、私を押し倒した。
「緋羽は僕のものだ。
誰にも渡さない」
「私は課長のものじゃありません」
眼鏡を外した課長が、じっと私を見つめる。
いまにも泣き出しそうな、その瞳。
「緋羽は僕のものだ……」
再び重なった唇に思考は奪われていく。
……結局この夜、いつも以上に泣かされた。
目が覚めたら、課長の腕の中だった。
……今日はきっと、課長をたくさん傷つけた。
私が意地になって、好きだって云わないから。
でも、自信がないんです。
私が好きだって云ったら、課長も好きだって返してくれる自信が。
僕のもの、そう云ってくれることは嬉しいんです。
でも、私が欲しいのは好きってただ一言なんです。
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