課長と煙草と私

22/27
前へ
/27ページ
次へ
最初は、課長から弄ばれてるのが嫌で、意地になって云わないだけだった。 でも、日がたつにつれて徐々に自信はなくなっていく。 ……もし、身体だけの関係を求められてるんだとしたら? そんな莫迦な考えすらあたまを掠める。 云わなかった言葉は云えない言葉になり、しこりになって私の喉を締め付ける。 「どうした?なぜ泣いてる?」 目を覚ました課長が心配そうに私の顔を覗き込む。 ……わざわざ、眼鏡をかかて。 「なんでも、ない、です」 「男女間で友情が存在しないことが、そんなにショックだったのか?」 皮肉を含んだ笑顔に余計に涙が溢れ出る。 「違い、ます」 あたまを振るとそっと目尻に口づけされた。 流れる涙を舌で拭うと、ぺろりと唇を舐めた。 「……苦いな」 云われた意味がわからずに課長の顔を見上げると、にやりと笑われた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

302人が本棚に入れています
本棚に追加