課長と煙草と私

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青筋立ててそんなふうに云われると、できないとか口が裂けても云えるわけなくて。 はぁーっ、聞こえないようにため息をつきつつ、とりあえず倒れてこないようにファイルを分ける。 ……女って怖い。 そう思いながら、ひたすら少しでも片付けようと、マニュアルを片手にパソコンに向かう。 入社して日が浅い私にはわからないことが多いのだけれど、聞こうにもお局様が怖くて誰も教えてくれない。 ため息混じりに仕事をとにかく進めていく。 「なんだ、まだいたのか」 かけられた声に顔を上げると、会議から戻ってきた課長が立っていた。 課内にはいつの間にか私ひとり。 時計の針は九時を指してる。 そしてファイルの山は四分の一がようやく片付いた程度。 「昼間、お喋りばかりに精を出しているから、そんなことになるんだ」 課長の、ハーフリムの眼鏡の奥からは冷たい、視線。 「……そう、ですね」 俯いたら涙が落ちた。 ちょっと友達と話していたくらいで、こんな。
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